深夜の本音【ショート・ショート45】
テレビを点ければ、似たような番組構成で、同じようなことを話し続けていた。不安を煽る情報の数々が、ただでさえ疲弊している心身の上に乗っかっていく。土台が揺らいでいる状況では堪える内容に辟易して、テレビに向かってクッション...
テレビを点ければ、似たような番組構成で、同じようなことを話し続けていた。不安を煽る情報の数々が、ただでさえ疲弊している心身の上に乗っかっていく。土台が揺らいでいる状況では堪える内容に辟易して、テレビに向かってクッション...
目が覚めると、隣で眠っていた君の姿は無かった。ベッドの横に置いた時計は午前7時半を少し過ぎていて、休日にしては早起きをしてしまった。もう少し寝ていたい。本音を飲み込んだのは、やっぱり可愛い寝顔が見れなかったからだろう。...
最近、ある女性が気になっている。 これが恋愛感情なのか、僕には全くもって分からなかった。 書類入れを挟んで向かいに座る彼女は、今年度から働くことになった新人だ。詳しいことは聞いていないけれど、当たり障りのない一般論を...
部屋に着いた途端に、屋根が雨粒を弾き始めた。好きな音に耳を傾けながら、僕は乗っていたロードレーサーを部屋の片隅に置く。フローリングの上に、通販やスーパーで貰った段ボールを敷いたスペースは異彩を放ち、違和感を体現していた...
冷たい風に吹かれ、顔が痛い。指もかじかんでいる。そんな状態にも関わらず、アジカンの『リライト』が脳内に響いていた。 サビの「消してー」のタイミングで左人差し指で内側に押す。ハンドルとブレーキの間にあるギアシフトのレバー...
「まさか、こんなことになるとは思わなかったよ」 真夏の横浜スタジアムのマウンドの上で、奏多と正対して亮太はこぼした。「オレは、そうは思わなかったけど?」 あっけらかんと、ここにいることは当たり前だと言わんばかりの表情で、...
ゴールデンウィークも過ぎてしまった。桜から新緑へのグラデーションが例年以上に薄い日々だ。世間はコロナ、コロナと連日報道され一定の隔離の中で生活を営んでいる。仕事と部屋、ときどきスーパーやコンビニへの往復。自粛という名の強...
[いよいよだな」 そう呟いて亮太は三塁側のベンチでストレッチをしている奏多を見つめた。奏多は、防具を着た背番号二番と談笑をしている。それがなんだか気に入らなかった。 お互いの意思で選んだ道で、再び交わることになった現実は...
亮太が奏多と出会ったのは、九歳の春。 教室で見ていた時の彼の印象は、何ともいけ好かない奴だと思っていた。でもグラウンドで見た印象は、それとは大きく異なっていた。今思えば、単純な嫉妬。好きとか付き合うとかいう概念が乏しい...
「応援してるよ、頑張れ、ヒカリ」 小雨が降り落ちる新宿の歩道橋で叫んだ。恥ずかしさを飲み込みながら、伝えた言葉は、彼女の耳に届いた。そのことを証明するように後姿だった彼女は振り向いて、紡の姿を見つめた。紡と彼女のやり取り...