引き出しの無さを笑う帰り道。

12月に入って、寒さが堪える時期になった。
冬は得意じゃないし、いい記憶もない。
むしろ嫌いな季節に入るけれども
国内にいると逃げることはできない。
仕方がないから、今日も震えながら生きている。
十連勤という社会の闇を走り抜けた先には
三連休というささやかなご褒美が待っていた。
ボクの休みの過ごし方というのは
基本的に惰性に浸食されていて
毎回、隣町のバッティングセンターに
深夜ラジオを聞きながらロードバイクを
走らせて、帰ってきたら読書するという
あまり人には理解されないような
過ごし方を繰り返していた。
これじゃダメだ!! なんてことは思わない。
そんな崇高な理想を掲げて生きていないし
別に満足感は高いから、気にすることもない。
結構な頻度で引かれるけれども
貴方の価値観は結構、僕は僕だと開き直っている。
ただ、そんな中でも変化のある過ごし方ってのは
確かに存在していて、それが今回の三連休だった。

12月6日(金)
村上春樹の「ダンスダンスダンス」下巻を読み
適当に昼食を取ってから何着しかないし
着る機会も少ない外向きの服を着こんで
自転車を走らせて駅へと向かう。
その途中で、馴染みの自転車屋に立ち寄り
自転車の修理兼無料駐輪を依頼する。
ここから駅までは五分程度。
スマホでアプリを起動して聞き始める
「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0」
R-指定とDJ松永の小気味よいトークと
縁遠いHIPHOP情報を聞きながら
電車に乗り込んだ。向かうは新木場。
Studio Coastというライブハウス。
出演者はCreepy Nuts。ワンマンライブだ。
チケットを応募して当選したときには
心底嬉しかった、でも違和感が広がった。
自他認める3軍、クラスのモブキャラが
HIPHOPのライブに行くというのは
相当な違和感なんだと思う。
でも実際当日が近づいてくると
ワクワクしていて、正直驚いた。
新木場に向かう為の経由地点である
東京駅に歩きながら京葉線の乗り場へ。
呆れるほど遠い道のりを歩きながら
すれ違うは夢の国からの帰還者や
サラリーマンだったりする。
労働と遊びの混じり合っていて
今日が金曜日だと気付くのは
10連勤の副作用といえる気がする。
16時過ぎに新木場に到着して
散歩がてら Studio Coast へ。
開場まで一時間は余裕であったけど
ファンの姿が結構目立っていた。
「バイブス」とか言いそうなヤツ
深夜のドンキを闊歩するようなヤツと
些か場違いな感じを抱いたけれども
こんなに寒いのにパーカーだけで
耐えられますか?という疑問符が
頭の中で踊っていた。
橋を渡ったら、すぐに着いて拍子抜け。
そのまま十八番の散歩を続けるのも
一興だと思ったけれども寒さに負けて
踵を返して駅のコメダへ直行。
この時、オードリーの武道館パーカーを
着るリトルトゥースとすれ違って
不安感が安堵感に変わった。
目的地のコメダはめっちゃ並んでいて
待つのは面倒だったのでノブに触れずに
引き返したら、すれ違う二組のカップル。
深夜のドンキにいるような身なりだった。
さっきの安堵感は瞬間冷却。募る不安。
改札近くにあったドトールに入り
カフェオレを片手に小説を開いた。
ガラス張りだったから色々な人を
目視できてしまって、少し疲れた。
趣味:人間観察。
そんなことを言えるような歳でもないから
ゆっくりとページを捲っているうちに
開演20分前、時間は守るタイプだ。
500番台のチケット片手に
冬の川沿いで無言で時間を待つ。
見渡す限り、陽キャばかり。
色々な意味で震えたよ。
ウソです。別に完全な手持ち無沙汰。
会場に入ってハイネケンを飲みながら
どの位置で観るかを考えていた。
それこそ後方で観るという選択肢を
行使しようとしたけれども
それじゃ何も変わんねぇ―なと思い
隙間を探して、辿り着く前方。
スピーカーめっちゃ近いな。
これが第一印象だった。
開演5分前、パンパンになった
ライブハウスを見渡す。
当たり前なんだけど
周囲を人に囲まれている。
隣はバイブスという言葉を
口にしていそうなカップル。
グループで中心にいるような
名脇役というポジションで
別のドラマがありそうな女性。
後ろには大学生くらいのカップル。
やべー、ポジションミスった。
ただ、右にはチェックシャツの男性。
ラジオリスナーの匂いを感じた。
DJ松永の世界一のDJから始まり
「板の上の魔物」「助演男優賞」の流れ。
周りなんて気にせずにのめり込んでいた。
僕を知っている人であれば
曲に合わせて手を伸ばしたり
飛び跳ねている姿は違和感しかないだろうな。
でも、全力でやっていたからね。
「変わらないけれど変わっていく」
「自分のことしか歌詞にしてないけれど
その歌詞に共感して……」
R-指定のメッセージを聞いていて
なんだか、純文学みたいだな。
なんてことを思ったよね。
帰り道、Creepy Nutsの曲を聴きながら
ぼんやりと車窓を眺めて振り返る。
ラジオネタも溢れていたこともあって
こんなにも多くの顔も知らない人と
曲と電波で繋がっているのだななんて
思ったら【明るい夜に出かけて】の
物語が頭に浮かんでいた。
この見えない関係性ってなんかいいよね。
夢の国の帰還者溢れる電車内で
珍しく自発的に連絡していき
次の日の予定を埋めていく。

12月7日(土)
久し振りのピーターパンスタジオ。
余裕を抱きながら準備をしていたら
まさかの人身事故でダイヤが乱れている。
どうやらあの部屋は僕を嫌っているみたいだ。
迂回ルートで辿り着き、部屋のドアノブを
回したら現れたドライヤーしている彼。
そういえば彼に会うのも久し振りだ。
学生街に相応しいハンバーグ屋で
昼食を取り、部屋に戻ってラジオ。
良くも悪くも考えることの多い時間。
引き出しの無さを痛感しながら
片やスキルをメキメキ上げる彼と
片や上手くなっていない僕との
不協和漂うラジオはどうなんでしょ?
もっとできるはず。
もっと引き出しはあるはず。
もっと話せるはず。
幾つもの理想と現実に肩を落としながら
電話口が最高の状態な自分を自嘲う。
努力もしていないのだから当然だ。
夜は友人と食事をしながら
開けてはいけないパンドラの箱を開け
人間という関係という難しさを
半ば突き付けられる有り様。
帰りの電車は昨日とは違う景色だ。
同じ場所に戻るのにな。
「カッコつけようとしている」
その言葉は、妙に芯を食っていて
溢れ出す自意識の弊害を知った。

12月8日(日)
二日間とは打って変わって
部屋に籠ってラジオを聞いては
小説を読むという普段の休日。
身体を休めるには必要不可欠で
部屋の扉がこの世で一番重たいと
実感する時間を過ごしながら
必要以上に考え事をしてしまう。
結果、一番疲れるというのに
繰り返すのはバカの証明だろうな。
そして安定の会話0。
自分の声すら忘れそうになる。

仕事に染まった日常がやってきて
全ての出来事が嘘だったかと感じる
肌感覚のない時間が始まっていく。
こんなにも固執しているのは何故?
問いかけてみても答えはでないし
それで頭が痛くなって、疲れる。
引き出しが少ない。
その言葉を踊らせても
何も変わらない。分かっている。
ただ生き方を変えられるほど
賢くないし、勇敢でもない。
自分の軸があるわけでもない。
行動よりも思考というシステムが
少しでも変化を与えない限り
僕はこのまま独居老人で
誰に気付かれずに消えていくだろう。
最終的に気付いたよ。
僕には睡眠がたりていないことを。
早く寝よう。

文責 朝比奈ケイスケ

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