歓喜の声は晴天の下で。

18個目のアウトを取った時に
「うっしゃー勝った」と
防具を身に付けたボクは
柄にもなく大声で叫んでいた。

今年から始まった働き方改革など
全く考慮されない人事と
10連休で浮かれる世の中に逆行した
10連勤によって精神が壊れそうになる
最悪のコンディションで臨んだ
公式戦の序章は、言ってみれば最悪だった。
前日の雨でグラウンドはグチャグチャで
野球をやるには相応しくない環境。
後攻ということもあり
最悪のマウンドで投げる投手のボールは
もはやキャッチボールみたいだった。
ストライクを入れないと進まない中で、
失った4点。コールド負けも視野に入る中で
時間は進み、気付けば2回を終わって6点差。
野球の常識で考えれば、絶望的な点差だ。
6点を追いかける展開に
新しく卸したミットの初陣は
若さというドーピングを施した相手チームに
ボロ負けするのだと、半ば確信していた。
そんな心境で迎えた3回表、ワンアウト。
センター前方へと打ち返された打球を
7キロ痩せたセンターが
ギリギリのところで捕球したところで
静かに風向きが変わり始めた。
一本の線になった運動不足のアラサー打線の
歯車が少しずつハマっていく。
3回の裏までににボクも含めた繋がりで2点を返した。
普段とは違う雰囲気は、かすかに希望の雰囲気を漂わす。
それでも4回のピンチを1点で乗り切り
3つアウトが取られたら終わってしまう
可能性がある土俵際の5回4番から始まるところで
歯車がしっかりと噛み合った。今でもウソみたいだ。
打線が繋がり、気付けば流れを変えたセンターの打順。
ツーベースヒットで塁に出て、進塁した三塁ベース上で
彼の打席を真剣なまなざしで眺めていた。
そんなときにワイルドピッチが起きるもんだから
ボクは走り出す。同点のホームに向かって。
相手のミスで同点に追いついた状況で
ベンチで防具を身に付けながら見つめる戦況。
センターがはじき返した打球はレフト線に落ちる。
塁審がフェアを宣告した瞬間の歓喜は
今まで経験したことのないものだった。
6点差をひっくり返す、逆転劇。
誰も予想しない展開に湧き立つベンチは
チーム史上最大の逆転劇はサヨナラを確信していた。
でも、人生はうまくは転がらない。
まさかの新たなイニングへ突入。
6回、正直この時には負けることなど頭になかった。
1番から始まる好打順を1点で抑え込んだ。
ミットを構え、マスク越しに見るグラウンドは
今まで見てきた中で最高の景色だった。

練習は裏切らない。
そしてこのチームで野球をすることが
大好きだと思い知った10連勤後の休日は
最高に気分の良さを感じさせてくれた。
ストレスまみれでくすんで靄がかかった景色が
やけに鮮やかに彩られていた。
これが生きるということだ。
肌で感じた最高の一瞬を照らした空は
目が染みるほどの青かった。

文責 朝比奈ケイスケ

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