今年も半分が過ぎ去っていくので。

水無月も終盤戦。
ワールドカップで期待されていなかった
日本代表の快進撃に沸く列島は
今日もサッカーで一色だ。
あと数日もすれば文月に入る。
それは今年も後半戦に突入することを
意味している、驚くべき事実だ。
年々、時間の経過が早くなるのは
恐らく、年齢のせいだろう。
あぁ、無限に感じた夏休みが懐かしい。

夏休みといえば一か月勉強を怠るな、と
学校側から提示される宿題を思い出す。
決して優等生ではなかった僕は
それらのものに手を付けなかった。
特に明確な理由はなかったけれど
多分、宿題に取り組む時間よりも
大事なことがあったのだと思う。
もうその大事なものがなんであったかなんて
覚えていないし、単純に面倒だっただけだと
判断していたのかもしれない。
今思えば、宿題はやるべきだったと思う。
ただ、今提示されても恐らくやらないだろう。
人間の根本というのはそうは変えられない。
その宿題の中で、一番嫌いだったのは
読書感想文だった。
何故、本を読んで感想を書かなくてはいけないのか。
小学生の頃の僕は、確かにそう思っていた。
目の前にはゲームやイベントに溢れているのに
わざわざつまらない本を長い時間掛けて読んで
抱いた感想を綴らなければいけないのかという
問いの答えは、正直見つかっていないけれど
それだけ本を読むという習慣は僕にはなかった。
それが今では本を読むことが一つの趣味になり
家の大半を書籍が埋め尽くしているし
小説を書いてみたり、ブログを書いていたりと
文章に魅力を感じているから、驚きだ。
人生の面白いところは、多分、そういうところ。

本を読むことは
自分のためにだけあると思うし
誰かに薦められた小説なんて
ちゃんと読んだ記憶はあんまりないけれど
(僕より本を読む奴が少なかったのもあるが)
誰かがきっかけで手に取る機会があるとして
それが誰かの人生を変えるきっかけになれば、と
考えてみたら、少し面白そうだったので
2018年度上半期に読んだ小説を挙げていこうと思う。
今年に限って言えば、かなりバランスが悪いので
そこは承知していただけると助かる。

2018年度上半期、読了作品一覧。

「活版印刷 三日月堂 庭のアルバム」
著 ほしのさなえ
今年の初めに読んだのはこの作品。
ほしのさなえさんのシリーズもの
「活版印刷三日月堂」の三作品目。
ざっくりと説明すると
パソコンなどを利用した印刷が主流になる前
印刷は活版印刷で行われていた。
活版印刷は判子をイメージをすると
割と分かりやすいのではないだろうか。
要は紙に写す前に、一文字だけ刻まれた塊を並べて
文章や名前を作り、それにインクをつけて
紙に写すという途方もない作業。
労力が掛かる大仕事である。
今の時代には合わない
コストパフォーマンスの悪い。
読んでいると、そんな印象を抱く。
そんな活版印刷を主人公の祖父は
生業にしていたわけだが
この世を去ってしまった。
工場には活版印刷に必要な機材が
ほぼ残っていて、とある理由で
主人公はそれらの眠りから醒まし
小さな依頼を受けていく。
そんなシリーズものだ。
この作品の魅力は、活版印刷という
未開拓な分野に触れていることもあるが
なにより「人」である。
登場人物、依頼の理由が魅力的。
更には過去に依頼した客が
ふとした形で次の客を呼んでくるのだけど
それは古くからある日本らしい
人との繋がりを示しているようで心が温まる。
SNSでの繋がりとは異なる
顔を合わせて、言葉を交わす繋がりは
懐かしくて、今の僕には刺激的。
この作品では、遂に最後のピースが
ハマるきっかけになるエピソードも含まれた
4話で構成されている。
ちなみに、このシリーズに触れたのは
近所の本屋でタイトルに惹かれたのが理由だ。

「透明カメレオン」
著 道尾秀介
大好きな作家のひとり
道尾秀介さんの文庫の最新作。
素敵な声を持つが冴えない容姿の主人公。
声を生かしたラジオパーソナリティ。
絶大な人気を誇る彼の容姿を知るものは数少ない。
仕事終わりに通うバーで出会った一人の女性の為に
ある嘘をつくのだが、それがバレてしまう。
彼女には人には話せない目的があり
その目的の為に主人公をはじめ
バーの個性的な常連客も
様々なミッションを科せられて
半ば危険な橋を渡りながら右往左往する中で、
彼女の隠していることを知ってしまう。
彼女もまた彼の秘密を知ってしまう。
恋愛要素ってよりも道尾さんが
以前情熱大陸で語っていた「救い」を
テーマにして作品を書いていると
言っていたことを思い出す秀作。
ミステリ作家である道尾さんが
散りばめる伏線を回収していく
圧倒的な構成は秀逸。
道尾作品で見かける大がかりで
どこか非日常的なラスト前と
そして痛みが伝わり涙腺が緩む
ラストは必見である。
この一冊は各メディアでも取り上げられていて
道尾作品の中では有名な作品であるが
個人的には「道尾秀介」という作家が
大好きなので手に取ったこと。
あとは、ラジオという媒体に
染まっていたことも大きな理由。
この作品は、ぜひ手に取って読んで頂きたい。

「ヒトラーの試写室」
著 松岡圭祐
「千里眼」シリーズが有名な
松岡圭祐さんの作品。
「戦下の日独映画界に隠された衝撃と感動」
という大それた文言が躍る帯に相応しい作品。
舞台は、1937年の日本とドイツ。
主人公は映画俳優を目指して京都太秦へと向かい
見事に撃沈するわけだが、その面接の終わり
運命的な出会いを果たすことから物語が進んでいく。
撮影技術研究所というセットを作る裏方で
働くことになった主人公と
映画を使って国家統制を目論む軍人など
幾つもの登場人物の目線で並行進行していく作風。
大工の息子であった主人公は映画の裏方の一員として
特殊撮影技術(特撮)の腕を磨いていく。
映画撮影は低予算で行わないといけないという
極めて厳しい環境の中で主人公は
神がった発想で主人公のみならず
多くの裏方を魅了していく円谷に出会う。
そして彼の豊富な知識、卓越した技、
常人では思いつかないであろう発想を吸収していく。
そして大きな成功を収めた主人公たちは
国家より陳腐な内容を彩るための
難解な特撮を求められていく。
ある作品の評価が同盟国であったドイツに届く。
この頃のドイツはヒトラーが支配している。
ヒトラーといえば国民を魅了した演説や
ちょび髭、ナチスなどが有名だろう。
物語の中では映画が生み出す力を
信じている節が見られるのは意外だった。
ドイツ(いやナチスか)の上層部が
映画を使い、情報を操作し、強いドイツを
示そうとする中で、日本の特撮に白羽の矢が立つ。
そしてドイツへと主人公は旅立つことになる。
動き出す、運命。
ドイツでも無理難題を突き付けられながらも
円谷から得た知識・技術を用いて表現し
裏方たちと映画を通して友情を築いていく。
のちにナチスの名誉党員になる主人公だが……。
国家が腹に隠す思惑、戦争への計算と
主人公をはじめとする特撮の人々が
抱く特撮への純粋な想い。
そして起きる事件。
読み終わって映画の考え方が
大きく変わっていったし
戦争の悲惨さを取り上げられるあまり
あまり取り上げられない外国の現実を
知ることができたのは印象深い。
何より史実に基づいていることで
より説得力は増していく。
あの頃の映画の存在の大きさ
日本とドイツとの文化の差は勉強になる。
今まで見てきた戦争作品とは異なる今作は
特攻隊、学徒動員、赤紙、などの
いかにも日本らしい戦争の影にはない
斬新なもので、かなり刺激的だった。
この作品を手に取ったのは
近年、松岡圭祐さんが史実を基にした
物語を幾つも出していて
その一冊「黄砂の籠城」を読んだことで
この人の作品は面白いと知っていたから。
ただ、人気シリーズ「千里眼」については
今になっても手を出せていない。

「ラプラスの魔女」
著 東野圭吾
言わずと知れた東野圭吾の作品。
物理や工学などを用いた
トリックが多い印象があるのだが
今作は地学や生物なども絡んでくる。
まさに理科の分野総動員。
完全文系の私には理解できないことばかり。
どこかの記事か何かで新しい東野圭吾作品と
読んだ記憶があるが、まさにそんな感じ。
加賀恭一郎シリーズや虚ろな十字架などの
人間の闇を取り扱う部分も要所要所で出てくるが
人間のエゴの愚かさは、悲しくなってしまう。
映画化にもなっているので読むのがつらい方は
映画を観ても面白いのではないかと思う。
手に取った理由は、ただ一つ。
東野圭吾だから。

「羊と鋼の森」
著 宮下奈都
こちらも今年、映画になった話題作。
たまたま教室に残っていたという理由で
学校の案内役になった主人公は
体育館のピアノを調律する調律師と出会う。
彼との出会いが主人公の人生を変えて
考えてもいなかった調律の道に進んでいく。
話のメインは、調律師として働くことになった
楽器店でのスタッフやお客さんたちの出会いだ。
個性豊かな人たちの中で調律について考え悩む
主人公の姿は、夢と理想の間にある壁の存在を
改めて突き付けられる。まさに青春小説だ。
本屋大賞にもなったこの作品は
音楽を聴いているかのような
心地よいリズムを刻んで進んでいく。
そのリズムに引き込まれるように捲る頁。
内容以外の部分にも感動できたし
文章のリズムがもたらす効果を
知ることのできた名作。
普段読書をしない人でも
読みやすい作品であると思う。
手に取った理由は、本屋大賞受賞作。
ブランチで取り上げられたものと
本屋大賞には、恐らくハズレはない。

「明るい夜に出かけて」
著 佐藤多佳子
「一瞬の風」や「黄色い目の魚」くらいしか
読んだことはなかったけれど
「ラジオ」と「小説」で検索して
ヒットしたのが、この作品。
コンビニでアルバイトをする主人公は
大学を休学している元はがき職人。
あるトラブルで大学での居場所を失った彼。
そんな彼の生きがいはラジオだった。
週に何度か夜勤のバイトして
深夜ラジオを録音しては聴く。
そんな日々の中で訪れた転機もまた
ラジオが絡んでくる。
服のセンスが圧倒的に皆無で
非行少女を彷彿とさせる
コンビニの常連客。
彼女と仲良くなる
きっかけはノベルティグッズ。
彼女は、主人公が愛してやまない
アルコ&ピースのラジオの
(実際のラジオ番組も実名で出てくる)
ヘビーリスナーであり
投稿をよく読まれる現役のはがき職人。
ラジオネームと容姿のギャップが
激しいのだが、これは読んで知ってほしい。
同じくコンビニバイトのエースは
ニコ生で知名度を持つ歌い手。
主人公、ヒロイン、ニコ生の歌い手と
そして主人公の事件を知る友人が共に
それぞれの武器を使い、ネットの世界で
不特性多数の人と繋がっていく。
また現実でもそれぞれが抱える
葛藤と闘いながら、生きている姿は
青春小説に相応しくて眩しい。
読み終えると
清々しい気分になるし
ラジオがより好きになるし
前を向こうと思えるようになる。
こういう青春もアリだなとか
思っちゃうのは青春小説を
得意とする佐藤多佳子さんの業だろう。
今作では佐藤多佳子さんのラジオが
本当に好きなんだなと感じるし
アルピーはじめ芸人のラジオ番組に
敬意を払っていることがよくわかる。
かなり個人的ではあるけれど
この作品にまつわる面白い話があって。
読み終えた二週間後ぐらいに
菅田将暉のANNを聞いていたら
スペシャルウィークの企画で
「明るい夜に出かけて」の
ラジオドラマをやるという。
なんか知らないけどワクワクしたよね。
YouTubeで検索すればヒットするはずなので是非。

紹介すると大変なことになるので
残りは、作品と作家だけ挙げておきます。
森博嗣さん関してはM&Sシリーズを
全て読み終えたら改めて書こうと思います。

「すべてがFになる」
著 森博嗣

「冷たい密室と博士たち」
著 森博嗣

「笑わない数学者」
著 森博嗣

「ジェネラル・ルージュの凱旋」
著 海堂尊

「詩的私的ジャック」
著 森博嗣

「思考を育てる100の講義」
著 森博嗣

「再度封印」
著 森博嗣

「幻惑と死と使途」
著 森博嗣

見て分かる通り
現在、森博嗣ばかり読んでいます。

文責 朝比奈ケイスケ

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