ボタンの掛け違い、でもいつかは気付く。

テレビを封じた部屋になって、数日が経過した。
ある液体が蒸気や氷になるような
劇的な変化はあまり感じていない。
そんなもんだとは分かっていたが
実証実験は幾つもの価値観に余白を作った。
例えば、今までテレビに費やしてきた時間が
どのように埋まるのかという素朴な疑問。
生きたことのない昭和に戻るかのように
読書やラジオが代わりに入ってきたという
想像の範囲内と言えば範囲内の結果に落ち着く。
観ていたドラマは最近知名度を上げている
民法公式サイトで観ればいいし
必要なニュースはラジオで聴けるし
詳細を求めたければ検索エンジンに
相応な単語を打ち込むだけで解決する。
実社会で起きている幾つかの事柄については
それなりに対応できるからこのまま継続しても
さほど問題は生じないというのが感想。
あとはテレビの代わりにパソコンに触れる時間が
以前よりも確実に増えたのも一つの事実。
このブログを更新しているのもその副産物。
これも予想の範囲内だ、勿論。

さて、テレビの電源コードを抜いて
今までに抱かなかった感想を挙げるとすれば
「音」に対しての意識が幾分変化したことだ。
以前であればテレビから放たれる音声が部屋に響いて
それなりに彩ってくれたが、今は意識しないと
部屋には不気味なほどの沈黙が流れるのだ。
ボタン一つで着色できた部屋の「音」を
自らの意志で選択するというのは
思ったよりも頭を使うことを知った。
食事時には特に頭を悩まされる。
無音でも構わないのだがそれでは
毎日の食事のように味気ない。
しかし下ネタ満載の深夜ラジオや
アップテンポ、ロックは不釣り合い。
クラシックでは落ち着かないし
お笑い系では食事が進まない。
結果的に野球中継で落ち着くあたり
順調におっさんとしての歩みを進めている。

あとはパソコンに触れる機会が増えたことで
自然と動画サイトを眺めてしまう傾向もある。
テレビのように長くないし、自ら選択するから
ぼんやりと眺めていることも少ないからこそ
自分の傾向がハッキリと見えてくる。
毎年訪れる病のようなものが幾つかあり
その一つが「スラムダンク」だ。
一年に一回程度のペースで
何故か読みたくなったりする。
特にYouTubeに上がっている山王戦。
一巻からちゃんと読んだことがあるかと
問われれば、即座に横に首を振るのだが
大体のストーリーは掴んでいる。
これは名作の条件でもあるとは思うが
それだけ流通しているという結論だ。
マンガ、アニメ、映画と様々な媒体で。
僕に関してだけ言えば
小学生の頃の夏休みに毎朝やっていた
アニメの影響以外の何物でもない。
「スラムダンク」を読んで
バスケを始める人も確実にいるだろうし
それだけの影響力のある作品に
どっぷり浸らなかったのは
理解力という面で、至らない部分が
存在していたということだろう。

「スラムダンク」以外にも
「ブルーハーツ」なども触れている。
なんでだろうか、と問うのは愚策のため
別に考えないけれど、思うことはある。
ボタンの掛け違い、みたいなもんだなって。
青春時代に触れるツールが少しズレがあった。
関心の矛先がメジャー方向になかったのだろう。
音楽の話で盛り上がった記憶は皆無に等しい。
自覚しているが音楽の好みも少しズレていた。
メジャーな音楽も聴いていたけれど
それよりも奇を狙ったというか、
メジャーとマイナーの境界線で
活動していたアーティストが好きだった。
(ドラマで言えば3~5番手以降の役柄が好みだった)
世代ど真ん中のオレンジレンジやケツメイシだって
有名な曲は知っている程度のレベル。
同じ話題を共有出来る友達がいれば
恐らく違ったのだろうが、結果論
そういえば周りの人と同じレベルで
話をする機会ってのは少なかったりする。
今でも継続している悲しき事実でもあるが。
同じくらいの知識量で同じ土俵に立てることは
思ったよりも素晴らしいことであると実感する。
そういう繋がりを求めて、SNSが機能していたのは
遠い昔のように思えるけれど、今もあるのあろう。
雑誌の後半に掲載された掲示板みたいな記事からすれば
恐ろしいくらいの文明開化なんだろうな、と思う。

音楽、スポーツ、漫画、映画、ドラマなどで
夢中になっているときに小説に入れ込んだことを
思い出したのは、今読んでいる小説のせいだ。
名作だと思う作品に出会う時期にが異なっていれば
何かが変わったのだろうと思わせる作品は
非常に重要で、ある意味財産なんだろう。
ただ、そろそろ自分の今にドンピシャな
作品に出会いたいな、なんて考えてしまう。
大抵、僕にドンピシャな作品の傾向として
後ろを振り向く必要性がセットだからだ。
そんな期待を込めて、今日も小説の頁をめくる。

文責 朝比奈ケイスケ

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