如月、表情が変わる少し前。

世界は、ふとした瞬間に表情を変える。
まるでゲリラ豪雨のように激しく、
それでいて片思いのように静かに。
唐突にやってくる転機を僕は
いつだって見逃していた気がする。
いや、見ないようにしていたという方が
正しいだろうか、情けなさ全開だ。
でもそんな凡人を通り越してしまった
劣等生の僕にだって一筋の光が差す
可能性は往々にして存在しているはずだ。
だから今度は見逃さないように
僕は僕の気持ちを整理して
正直になる必要が求められる。

それを人は転機と呼ぶんだろう。

冬の寒さが身体にぶつかり
手足が震える夕暮れ時。
久し振りにファミレスで
幾つかのレポートに従事し
厄介な問題と向き合っていた。
大学生の頃、深夜の喫茶店で
タバコを吸いながら問題を
解いていた記憶がぼんやりと
頭を駆け巡り、懐かしさが心を染める。
あれから月日が経過して早七年くらい。
気付けば僕は社会人になっていて
業務命令の研修を終えてから
喫煙席でテキストやらスマホと
向き合いながら、巡らす思考回路。
少しだけ大人になったと思う反面で
案外やっていることに変化がないな、と
少しばかり自嘲的になってみたりして
なかなかの忙しさに追われていた。
でも、どこか既視感がある。
不思議だな、と思いながらも
その答えを探さずに進めるペン。
この瞬間は、それが正解であり
多分、最善の一手だった。
 
僕には幾つかやるべきことがある。
それを篩に掛けて分別することで
見えてくるのは不必要に染まる日々。
やりたいことはあるのにも関わらず
やれていないことばかりだ。
これを社会の仕組みから生じる
一種のしがらみと呼ぶのであれば
知らぬ間に片足が嵌っていることを
痛感せざるを負えない。
なんて風に頭を抱えてしまう。
でもどこか安堵感があるのは
必死にならなくても生きていける
方法を持っているということに
自覚してしまったからだろう。

でも、もしも、あの時。

以前開催したイベントの一環で
書き起こしたショート・ショート
「前夜」の言葉が蘇った。
あれは諦めからの立ち直しを
誓う意味があったはずだ。
冷静に状況を鑑みたのは
そのあとすぐの話であり
藁の中から針を探すように
丁寧に状況を見つめた。

状況は何も変わっていない。

その一言だった。
学生時代にはあった自由は
社会人になって不自由に変わり
色々な拘束、価値観によって
視野狭窄に陥っていたのかもしれない。
勉強が仕事に移り変わり
バイトから正職員に変わっただけ。
もちろん、相応の責任はあるけれど
僕はただの一兵卒であり
無駄に背負う必要はないのだ。
状況で負うべきものが多いけれど
まだ背負いこんで窒息するには
早すぎるように思えた。

そうだ、僕は見えている表面だけに
気を取られてしまった結果
裏側を見ていないのかもしれない。
どんなに不自由であったとしても
可能性は確かに存在しているのだ。

そんな風に感じた帰り道に
音を立てて震えるスマートフォン。
着信主は僕が出会った人間の中で
最上級の夢追い人からだった。
開口一番、彼は僕の想像を
容易に抜き去って途方もないことを
僕に告げる。やっぱりバカだ。
至高のバカ。振り切った感覚は
気持ち良さすら感じるすがすがしさ。
いや、違うかな。彼はバカじゃない。
好奇心旺盛の純粋無垢な少年なんだ。
そう悟った時、臆病風が追い風に変わる。
いい意味でバカという単語を使っているが
それは僕の理解の範疇を超えた人種であり
彼に相応しい言葉が見つからないだけ。
才能とか誰かの手あかが付いた単語で
表現できない人間が人生という音楽を
楽しそうに奏でて、日々を彩る姿を
僕は誰よりも近くで見続けてきた。
時には共に形にしたこともある。
恐らく恵まれているのだろうな。

だから彼に並ばないといけない。
僕にある僅かな可能性を信じて。

ある大好きな冒険漫画に残る
好きなフレーズが
頭に浮かんだけれど
敢えて胸に秘めておくことにする。

代わりに僕が思う言葉を綴って
今回のブログが終わりにしようと思う。

「一見狂っているように見える奴が世界を変える人間だ」

文責 朝比奈ケイスケ

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