ハイライト

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ハイライト 36

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

あの日から、もう三か月が経過した。もう春がすぐそこまで来ていた。  去年の春から何度も袖を通したスーツ姿の僕は、写真室でカメラの前に座っていた。カメラの向こう側でマスターが真剣な表情をしながら、それで […]

ハイライト 35

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

足を踏み入れた公園は薄暗かった。住宅地の空きスペースに作られた公園は中心部に大きな木が植わっていて、端の方には鉄棒とベンチ、分煙の為に四枚のパーティションで区切られている喫煙所、公衆トイレがある質素な […]

ハイライト 34

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

僕達は電車を乗り継ぎ、宮野写真館のある駅に降り立った。 「ここに来るつもりだった?」 「まさか。ここにはクリスマスらしいものは何にもないから止めておいた」 「でも来ちゃったね」 「そうだね」  他愛の […]

ハイライト 33

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

彼女と久し振りに会う日、これからの行く末を示しているような雨が降り落ちている。気持ちが萎えそうになるのはある意味必然だった。気を保つ為に雨降って地固まるという諺を呟くも、最終的に雨天ノーゲームにでもな […]

ハイライト 32

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

夜の寒さに耐えながら街を歩けば、神の誕生を祝うイルミネーションが、それこそ神々しく輝いている風景と出会うことが増えた。それは世間一般的に浮き足立つイベントが近づいていることを意味しているが、例年の僕に […]

ハイライト 31

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

街を歩く多くの人が、マフラーや手袋を身に着けているようになった。本格的な冬の訪れへの準備で忙しなくなる時期、僕は毎年の恒例行事のイベントにより忙殺されかけていた。  多くの写真館を支える日本古来の伝統 […]

ハイライト 30

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

「で、オレを呼び出したのは?」  ベランダの手すりにもたれかかった彼は呟く。過去の回想を漠然と自分の世界に浸っていた僕を現実に引き戻す。 「あっ、葛西さんの噂を聞いて……確認しようと思いまして」  精 […]

ハイライト 29

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

大学の研究室のベランダから外を眺めていた。急にやってきた寒さに立ち向かい、色付いた葉っぱがまばらに木々に残り、申し訳ない程度に景色に彩りを加えている。冬が近いことを感じる夕暮れ時は、シャツの上に着てい […]

ハイライト 28

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

「お前、正気か?」  酒に酔った翔平が僕を責めるように口走った言葉には棘があった。いつもの居酒屋でテーブルに置かれたグラスや取り皿、灰皿も普段通りだった。それなのに個室には居心地の悪い空気がこもってい […]

ハイライト 27

ハイライト | 朝比奈ケイスケ

「……ありがとう」  沈黙を破った感謝の言葉は、どこか想定の範囲内の言葉だった。その後に続く、接続詞の有無によって、僕は全く異なる景色を見ることになる。 この時に僕は初めて知った。誰かに想いを告げるこ […]

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